台所でお母さんが夕食の準備をしていた。

手伝うために、私も台所に立つ。



「穂希、今日は駿翔くんとどこに行ったの?」

「え?……まぁ、図書館、とか?」



米子さん家にも行ったけれど、何となく言えなかった。



「図書館でデート?」
と、お母さんは驚いた顔をするので、私は慌てて否定する。



「で、デートじゃないよ」

「ふぅ〜ん、まぁ、いいけどね」



料理を続けるお母さんの背中に、
「お母さんは、米子さんのことが嫌い?」
と、思い切って聞いてみることにした。



「米子さん? ……嫌いっていうか、よく知らないっていうほうが正しいかな?」



返ってきた答えがおばあちゃんより穏やかだったので、少し安心した。



「米子さんって、ずっと村にいる人なの?」

「えー? 知らないけど……、私の子どもの頃から村にはいたと思うよ?」



お母さんが考えつつ返事してくれていると、
「また米子の話かい」
と、おばあちゃんが台所にやって来た。