「黛 夕子は度々、癇癪を起こしていたって書いてあったもんな? 振られて激怒して、片想いの相手を殺しているし、きっと殺されたことに対しても怒ってるんだろうな」

「そうかもしれない。ねぇ、だったらこの歌詞の、【飾るよ 飾るよ】って“くれない様”のことかな?」



「えっ? 待って、どういうこと?」
と、駿翔くん。



「私、ちょっと思ったんだけど、【暗がりの中を 灯すから】って、“くれない様”の洞窟を思い出すかも」



洞窟の中。

祠があって。

ろうそくの火が灯っていた。



駿翔くんは、
「そういうことか」
と言って、それから悲しそうな表情をした。



「飾るって……、黛 夕子を“くれない様”として洞窟の中に祀ったってことなんだな。怒りを鎮めるために」

「このわらべ唄、黛 夕子が“くれない様”になるまでの唄なんだよ、きっと」



私達の間に沈黙がおりた。



沈黙を破ったのは、駿くんだった。



「まだ十八歳だったんだよな」