図書館が閉まるギリギリまで、私達は黛 圭一の本と向き合った。
「閉館になりますよ。もう出てください」
と、図書館司書のお姉さんに言われてしまったので、私達は本を返し、バス停に向かった。
黛 夕子は。
大橋 寛太郎を殺害した後。
しばらく素知らぬ顔で、日常を送っていたらしい。
でも息子の変わり果てた姿を見つけた、村の地主である大橋 寛一は。
息子を奪われた悲しみとその執念から、犯人を探し、それが黛 夕子だと確信する。
息子と同じ苦しみを、夕子にも味わわせてやる。
そう思った寛一は。
夕子の家族に大金を渡し、夕子の命を買った。
夕子を疎ましく思っていた家族はその日、夕子と女中ひとりを家に残し、もらったお金を持って、村の外へ遊びに行く。
寛一は夕方、黛家へ村人達と共に押しかけ、火を放つ。
黛 夕子は十八歳だった……。
「黛 夕子って、みんなから嫌われていたんだな」
と、駿翔くんがバス停から見える空を見上げて言う。
辺りは暗くなっていて。
空には星が見える。