あと一時間程で、図書館が閉まってしまう。



「何か見つかった?」
と、駿翔くんが聞いてきた。



首を振る私。

私は昭和元年になる1926年から書かれている、二冊目を読んでいて。

まだ半分も読めていない。



「駿翔くん、今は何年の出来事読んでる?」

「オレ? 次のページから1869年」

「一冊目って何年からの事件が書かれてたの?」

「江戸時代の後期かな? 終わりの頃だと思う」

「ひぇー、江戸時代!」



冗談っぽく言いつつ、でも本気で驚いていると、駿翔くんが「穂希」と、真剣な声で私を呼ぶ。



「どうしたの?」

「【大橋 寛太郎殺人事件】だ」



一瞬、何のことだかわからなかった。



「……覚えていない? 黛 夕子のこと」

「あっ!」



ハッとした。

黛 夕子。

前回図書館に来た時に駿くんと見つけた、黛 圭一と同じ名字の罪人。