「……孫娘を引き取って育てるって書いてある。1960年に、オレ達が見つけた『内日暮村事件録』二冊を、出版社が発行。黛 圭一が五十九歳の時だって」
「そうだったんだ」
しばらく黛 圭一についてインターネットで調べていたけれど。
その他にわかったことといえば。
黛 圭一が八十一歳の時に肺がんで亡くなったことくらいで。
特に罪を犯したなどの、米子さんが隠したいと思う理由は、見当たらなかった。
「……あとはこの分厚い本の中に、何か書いてあることを願うって感じだな」
「米子さんのことも、“くれない様”のこともね」
私達はそれぞれ本を開く。
黛 圭一が村の人間だったとわかった今。
“くれない様”について黛 圭一が知らないわけがない。
そのことだけで。
私達は何時間も本とにらめっこしていた。
どれくらい時間が経ったのか、顔をあげて時計を見ると、夕方の五時だった。