黛 圭一は小説家だったらしい。
妖怪などが出て来るストーリーが得意だったみたいで、代表作は妖怪が見える武士が、妖怪と協力しつつ、世直ししていくシリーズものだった。
「見て。黛 圭一は内日暮村で母子家庭で育つって書いてある」
「やっぱり村の人なんだ!」
「父親と母親が離縁した後、父親は消息不明……」
「……」
駿翔くんは続きを読む。
「黛 圭一はその後、二十四歳で隣町の娘と結婚。二十五歳の時にひとり息子が誕生」
「米子さんのお父さんだよね」
「そうみたい。子どもはひとりみたいだし」
駿翔くんのスクロールする指が、ある場所で止まった。
「どうしたの?」
「黛 圭一の息子さん、結婚して子どもがひとり生まれるんだけど、その三年後に亡くなっているみたい。奥さんと一緒に」
「えっ?」
「1953年に息子夫婦を交通事故で亡くしたって書いてある」
私は黙った。