「名字を隠さなくちゃいけない、何かがあるのかな?」
と、私は駿翔くんに言う。



黛 圭一と血縁関係にあることを、米子さんは隠している……?



「黛 圭一が何かした人なのかな?」
と、駿翔くんが呟いた。



「何かって?」

「罪を犯した、とか?」

「そうなのかな?」

「何らかの罪を犯すとさ、やっぱり騒がれるじゃん。本を出した有名人なら、メディアだって動くんじゃない?」



駿翔くんはそう言ってから、「あっ」と、何かを思いついたみたいで、スマートフォンを取り出した。



「なんで今まで思いつかなかったんだろう」

「何?」

「本を出した有名人なら、ネットでも調べられるじゃん」

「あっ……」



駿翔くんはスマートフォンの検索画面に、『黛 圭一』と打つ。



「米子さんが隠したいようなこと、書いているのかな」
と、沈んだ声で駿翔くんは言う。



「わからないなら、わからないほうが良い気もするよな」



駿翔くんはそう言いつつ、画面をスクロールした。