駿翔くんが「貸して」と、二冊目の本をパラパラ見る。



「穂希、見て……!」



何かを見つけたらしく、私も本をのぞく。



「これ、作者の黛 圭一のあとがきの最後」



そこには、こう書いてあった。



【十歳の最愛の孫娘、黛 米子が、いつか大人になってこの本を手にした時、彼女にとっての道標(みちしるべ)になることを切に願う】



「……黛 米子……?」



私達は顔を見合わす。



「米子って……、あの、米子さん?」

「黛 圭一の孫娘だったってこと?」



(どういうこと?)



米子さんが、黛 圭一の孫娘なら。

黛 圭一だって、村の人間だったかもしれない。



「村に、黛なんて名字の人がいるなんて、私は知らなかった」

「そういえば米子さんのフルネーム、知らないもんな?」



私は頷く。

そういえば、米子さんの家に表札はなかった。



まるで。

名字を隠しているみたいに。