「そう。その人の本で『内日暮村事件録』というのがあって、“くれない様”のことを調べようとしていたんです、私達」
私も相槌を打ちつつ、米子さんに言う。
「村の事件を記した本なんですけど、“くれない様”のことが書いてなさそうで」
と、駿翔くんが言うと、米子さんはココアをまたひと口飲んで、
「きっと、書いていると思う。調べきれていないだけ」
と、なぜか自信満々に答えた。
「知っているんですか? あの本のこと」
私の問いかけに、米子さんは曖昧に笑っただけだった。
米子さんの家から出て、駿翔くんとそのままバスに乗った。
これから、隣町の図書館に行く。
バスの中で。
駿翔くんが、
「ちゃんとわかるといいね」
と、励ますように言ってくれた。
「駿翔くんに甘えてしまって、ごめんね」
いつもそばにいてくれることも。
こういうふうに、協力してくれることも。
嬉しいし、ありがたいから。
ついつい、甘えてしまっている。