「“くれない様”が言ったんです。私は似ているって」
「似ている……?」
「誰に似ているんだろう? って思って。誰かに似ているから、私にこう言ったんだそうです。『あなた、くれない?』って」
米子さんの目が大きく見開いた。
「まさか、あなた、それに答えた?」
私は首を振り、
「その言葉には返事をしていないんです」
と、返事をした。
それを聞いた米子さんがホッと安心したことが、私にも伝わった。
「いい? その言葉に返事をしてはいけない」
と、米子さんが慎重に言う。
「え? 何でですか?」
駿翔くんが米子さんに問う。
米子さんは、
「その返事を返したら、その人の最後だから」
と、答えた。
「……その人の最後……」
米子さんの言葉を繰り返す駿翔くん。
「いい? 『あなた、くれない?』と聞かれることは、『あなた自身を私にくださいませんか?』と言われているのと同じことなの」
「どういうことですか?」