「で? どこ行く?」
と、駿翔くんが再び聞いてきた。
私は慎重に答える。
「私、“くれない様”のことで米子さんに聞きたいことがあるの」
米子さんの家は。
村の外れ。
墓地のそば。
雑木林の近くにある。
「気分転換にならないね」
と、駿翔くんが少しだけ愚痴るように言う。
「ごめんね」
と謝るけれど、私には他に行きたい場所が思い当たらなかった。
米子さんが伝えてくれたことを。
私は考えなくてはいけない。
米子さんの家に着いた。
今にも崩れそうな、木造の平家で。
玄関にあるはずの表札がなかった。
「米子さんって、近づいちゃダメって言われている、あの米子さんだよな?」
と、駿翔くんは言いつつ、インターホンのチャイムのボタンを探している。
私は駿翔くんに頷きつつ、
「米子さんっ、いますか?」
と、玄関のドアを叩いた。
ドアの向こうに。
足音が聞こえた。