『もしもし、穂希?』
久しぶりに聞いた気がした。
駿翔くんの声。
『穂希?』
「あ、ごめん。もしもし、聞いているよ」
『穂希、今日の午後って何か予定ある?』
「えっ?」
駿翔くんは少しだけ黙って。
それから、こう言った。
『午後、もしも時間があるなら、オレと出かけない?』
出かける?
それって……。
『気分転換しようよ。最近ずっと気が張り詰めているだろ?』
「うん。嬉しい」
『穂希の行きたいところに行こう。穂希のおばあちゃんには、オレから許可取るから』
あとでねって言って、駿翔くんと電話を切った。
駿翔くんは自分が許可を取るって言ってくれたけれど、私も自分からおばあちゃんに話さなくちゃ、と思って。
一階に下りた。
おばあちゃんの部屋のふすまを、軽くノックする。
「なんだい?」
「入ってもいい?」
「何かあったのか?」
と、おばあちゃんの顔が心配そうになる。