「琳音を探しに行ったんだ」
私は話し始めた。
雑木林で琳音を見かけて。
追いかけて、掴んだその手があたたかかったこと。
だけど、琳音の声じゃなかったこと。
その正体が、“くれない様”だと思ったこと。
「それで、“くれない様”はしきりに尋ねてきてた。『あなた、くれない?』って」
その場にいた全員が、息をのむ。
「くれないなら、いらないって。死ねって言われた」
そして首を絞められていたこと。
でも何故か、“くれない様”は悲鳴をあげて走り去ったこと。
「“くれない様”が、悲鳴?」
と、村井のおじさん。
「どういうことだろう?」
おばあちゃんと琳音のおじいちゃんも顔を見合わせている。
「何なんですか? そんなに不思議なことなんですか?」
と、琳音のお母さんが尋ねる。
「わからないけれど、そんな話……、聞いたことがなくて」
おばあちゃんが答えた。