「やだっ! は、離してっ!」
“くれない様”の手を払うように抵抗しているけれど。
そんなの意味なんかなくて。
そのまま、私は再び首を絞められて。
力が抜けたひざから倒れる。
「いらない! いらない! いらない!」
“くれない様”は叫んでいる。
必死に抵抗していた手からも力が抜けて。
腕がだらんっとおりた。
ポケットに入れていたスマートフォンが、地面に落ちる。
「ひっ……!!」
“くれない様”が小さな悲鳴をあげた。
“くれない様”の手の力が緩み、首から離れる。
「ゲッホ! ゲッホ!!」
咳き込みつつ、“くれない様”を見てみると。
両手で顔を覆って、悲鳴をあげている。
(何!?)
どういうことかわからず、戸惑っていると。
「……れ!穂希!」
と、遠くから声がした。
誰かが、私を呼んでいる。
「許さない……! 許さないからね……!」
と、“くれない様”は吐き捨てるように言い、雑木林の奥へ走り去った。