そのまま“くれない様”は、倒れた。



「ゲッホ! ゲッホ!!」



解放されたのどから、空気が体に巡る。

咳き込みつつ、“くれない様”を見ると。

目を閉じて、倒れていて。

額の横がほんの少し出血していて、赤く腫れている。



手のひらを開けて、自分が掴んだものを見ると。

片手におさまるほどの大きさの石だった。



サーッと血の気が引く。



「り、琳音……、ごめん!! 大丈夫!?」



このまま琳音が起きなかったらどうしよう、と焦って。

私は琳音の体を揺する。



気づいたのか、目が開いた。

そのことにホッとしていると。

琳音の黒い瞳が。

ギョロッと、私を(とら)えた。



「っ!!」



「あはっ、あはははっ!!」
と笑う彼女が琳音ではないことを、私は思い知る。



「あはははっ! あはははっ!」



“くれない様”は何がおかしいのか、立ち上がってもずっと笑っている。


そして、
「もう、いらない」
と、呟いた。