“くれない様”に捕まっているなら、あの洞窟にいると考えるのが妥当な気がした。
だけど、まずみんながそう思うはず。
村の大人達が探さないわけがない。
「火の、見回り当番……」
そうだ。
見回り当番に、毎日誰かが洞窟に行っているはず。
それで琳音を見ていないなら。
琳音は洞窟にはいない、ということだ。
(雑木林の中にいるの?)
雑木林の奥の、山のほうにいるんだろうか?
(見つけてあげなくちゃ)
それが。
私の役目なのかもしれない。
琳音を怒らせて、こんな事態を引き起こした私の、やるべきことなのかもしれない。
ひとりで。
雑木林に行くために村を歩いていた。
まだ朝の早い時間だからか、曇った天気のせいなのか、暗い空で空気が比較的冷たく感じる。
自治会館の前を通って。
バギーを押している女性とすれ違う。
バギーの中には、眠っている幼児が見えた。
(光くん……)
地面に血を流して横たわっていた、小さな光くんを思い出す。