次の日から私と桜の、『藤堂先生にアタックゴー・ゴー作戦』が実行された。
 え?先生に彼女いるからきっとダメだって?
 ちっちっちっ!甘いなぁ~
 男はね、近くにいる女の方に魅力を感じてフラフラ~っといっちゃうのよ。わかった?
 っていうのは昨日桜に言った私の台詞なんだけど(笑)、ちょっとチャラいけどホントは真面目で優しい藤堂先生には結構グイグイいった方がいいのかな、って思ったからこの作戦にした。
 先生と彼女は遠距離らしいから(情報元は不明だけど)、慕ってくれる教え子を無下にもできない優しい先生には押せ押せでアタックすれば、もしかしたらもしかするかもっていう期待を込めて頑張ろうと桜と決めたのだ。
 そしてその作戦を実行に移すべく、私と桜は職員室に来た。

「藤堂先生ー!質問があります!」
 私は職員室の入口のドアで大声を張り上げて、先生を廊下に呼び出した。そして出てきた先生に桜が質問する。
 もちろん、質問なんてただの口実だけどね。だって桜、頭いいし。
「あのね、先生。ここなんですけど……」
「おい、桜。教えて欲しいなら自分で呼べよ。人に頼らずさ。」
「ごめんなさい。でも恥ずかしいじゃん。大きい声出すなんて。」
「じゃあ何か?私は恥知らずって事か?」
「え?違うの?」
「おい!」
「はははっ!お前らは見てて飽きないな。」
 先生の一言で二人は静かになった。マズイ、マズイ…ついいつも通りのやり取りしちゃった……

「さて、気を取り直してここ教えて下さい。」
「はいはい。そこはあーでこーでそうなって……」
「ふんふん。それで?」
「かくかくしかじかで……」
「なーるほど!」
 桜はわざとらしいリアクションをする。
 私はちょっと離れた所から二人を見ていた。

 180センチ近い身長で地学教師のくせにスポーツマンみたいな体つきの藤堂先生は、意外にもといったら失礼だけど爽やかな二枚目で、高崎先生に負けず劣らず人気がある。
 ぞんざいな口調と軽いノリからチャラいと思われるけど(まぁ間違ってはないが)、実のところ真面目で熱血漢ないい先生だ。
 さすが私の親友。男を見る目がある。
 そんな事を思っていると、何処からか視線を感じた。キョロキョロと辺りを見回すと職員室の高崎先生とドア越しに目が合った。
「先生……?」
 私と目が合った瞬間先生はスッと視線を逸らす。だけど私はずっと先生を見ていた。
(何だろう……先生どうしたのかな?)
 何だか元気のない様子に、私は心配になった。