桜と藤堂先生を教室に残してきた私は、廊下をぶらぶら歩いていた。
 まだ登校時間には早い為、当然のように誰もいない。

「朝早く来ても楽しい事なんてないな~。何が早起きは三文の得よ!」
「あれ?風見さんじゃないですか。」
「あ、高崎先生!」
 やっぱりさっきの取り消し。早起きは三文……どころじゃない。何万文の得!……ん?どうしてそう思うんだろう……
 朝から先生に会えて私、ウキウキしてる?

「どうしたんですか?風見さんがこんなに早く来るなんて……。明日は雷が鳴るか槍が降るかも知れませんね。」
「先生酷い……私だってたまには早起きくらいします!」
 そう言って泣きマネをした。っていうか何気にさっきの藤堂先生より酷くない……?
「え?あ、その…すみません。言い過ぎました……」
 先生ってば慌ててる。私は手で顔を覆いながら見られないように舌を出した。
「…なぁ~んて、嘘!」
「あ!騙したんですね!」
「ごめんなさ~い」
 笑いながら手を合わせると、先生も笑顔を見せた。

 ドキッ!あ、あれ?何で心臓が跳ねるんだ……?
 もしかして私病気?うわー、まだ17才なのに初恋もまだなのに~~!
「風見さん?」
「へ?」
「どうしたんですか?百面相してましたよ。」
「い、いえ…何でもないですよ?」
「そうですか。……あ、そうだ!風見さんに頼もうと思っていた仕事があったんですが、ついでですので今伝えてもいいですか?」
「え?仕事?それは例のHR委員長としての仕事ですか?」
「はい。」
「えー……」
 仕事と聞いて急にテンションが下がる。何が早起きは三文の得よ!(本日二回目)

「もう……今度は何ですか?」
「それはですね……」
 誰もいないのに急に小声になる先生を不思議に思いながらも、耳を傾けた。