「はぁ~……」
 停学をくらったその日、私は授業も受けずにそのまま帰ってきた。部屋に直行してベッドにダイブする。
「あーあ、一週間か……長いなぁ。」
 仰向けになってボソッと呟く。途端、桜の顔が浮かんでまたため息が出た。
「桜……心配してるだろうな……」
 結局何も説明しないまま帰ってきちゃった事に今更ながら後悔する。でもあの時は他の子もいたし謹慎明けてからちゃんと話すつもりだったから、取り敢えず今はこの一週間をどんな風に過ごすかを考えなきゃ。
「う~ん……でもなぁ…私に読書の趣味はないしゲームとかもあまり好きじゃないから持ってないしスマホのアプリゲーム?なんてのもないし。遊びに行くのだって多分ダメだろうし、そもそも一人で行ったってつまんないし。」
 そこまで考えたところで頭を抱えた。
「っていうか、私の趣味って1に桜とお喋り、2に桜を愛でる。3、4がなくて5に桜と遊ぶ♪だったぁ~!」
「桜ちゃんがどうしたの?」
「わぁぁ!お、お母さん!」
 でかい声で一人言を言っていたらドアを明けてお母さん登場。私は飛び上がった。
「下まで聞こえてきたわよ。」
「す、すみません……」
「ほら、高崎先生からお電話。」
「え"!?」
『ほら』と言って保留にしてる子機を差し出してくる。突然の事に固まっていると無理矢理握らされた。
「何があったか知らないけど、どうせあんたが迷惑かけたんでしょ?ちゃんと先生に謝りなさいよ。まったく…一週間も停学なんて一体何したの?」
 校長をハゲと言ったからです。とは流石に言えない……
「じゃあね。先生によろしく言っといてね。」
「はーい……」
 お母さんが出て行ったのを確認すると、震える指で保留ボタンを押して耳に当てた。

「……もしもし?」
『あ、高崎です。』
「何の用ですか?」
 ちょっと冷たかったかな、と思いながら先生の次の言葉を待つ。
『すみませんでした。僕のせいで一週間も停学になってしまって……』
「いえ。私が勝手にした事なので。そりゃこの処分に納得はしてないけど、後悔はしてませんので。」
 きっぱり言うと、電話の向こうで息を飲む気配がした。
『あの風見さん……』
「はい?」
『僕の為にありがとうございました。あの言葉、凄く嬉しかったです。改めて僕は教師という仕事が……生徒が大好きなんだって思いました。僕は昔からこうと決めたら一直線みたいなところがあって、風見さんが止めてくれなかったら本当に大事なものを失うところでした。』
「…………」
『でも僕の想いはそんな大それた事をしてしまうくらい、大きくて大切で……それだけは知っておいて欲しいんです。』
 先生の真剣な声に言葉が出ない。私は何も言えずにただ黙る事しか出来なかった。
『では一週間後に。』
「あ、はい……」
 慌てて返事をするとすぐに切れてしまう。私はしばらく茫然とベッドに座っていた。

「もう……どうすりゃいいのよ……」
 子機を見つめながら小さく呟いた……