そんな時、哀の近づく気配が感じられなかった。



哀が私の顔のすぐそばに来た時、やっと近くにいることを理解した。



「わああっ!?なんでそんな近い……の」



私からキスした記憶が蘇り、慌てふためいていた時。



哀の唇が私の右頬に触れた。



たった1秒くらいのキスだったはずなのに、私からしたら10秒くらい長く感じられた。



不意打ちのキス。



私からした時と似たようなシチュエーションで、哀が離れてからぶわわっと顔が赤くなった。



「あ、あああっ」



「これでおあいこだな」



昼頃の驚いた顔、赤い顔でもなくニヤリと笑った悪の顔。