「お前は俺だけ見てたらいいんだよ。他の男のこと考えんな」



ボソッと呟かれた言葉は、近くにいた人にしか聞こえていないと思う。



ただ小さい声だったからこそ、私は恥ずかしくてどうにかなりそうになる。



人差し指を離してくれたあと、哀はノートを教卓に置いて自分の席に戻って行った。



「びっ……くりしたね。まさか哀くんがあんなことするなんて」



「ほんとあんなこと言うなんて思わなかった……不意打ちずるい」



「あんなことって?」



理子には後から告げられた言葉が聞こえていなかったらしい。