「紫乃前、前!!」



「え?」



理子の焦る声が聞こえて前を見た。



ずっと哀か理子の方を見ていたから、全く前を見ていなかった。



男の子っぽい背中がすぐ側にあって思いっきり顔からぶつかった。



そのまま後ろに倒れ込んで鼻を押えた。



「いったぁい……。鼻潰れたかも」



「いや、紫乃それどころじゃないって!!」



振り返った男の子が私を上から見下ろした。




哀くらい綺麗で彫刻みたいに素敵な男の子。



「大丈夫ですか?」



差し出された手に困惑しながらも手を取った。



ぐいっと引き上げられて、その勢いで彼の胸に飛び込んだ。