結局おばさんの荷物を行き先へ持っていった時には、30分くらいの遅刻が確定していた。



『サボる?』



『無理!急いでいくよ!』



いつもは手を引かれる側の紫乃が、俺の腕を掴んで駅まで走っていく。



困ってる人を放っていくことは絶対にしない。



自分に悪いことがあったとしても投げ出さない紫乃は、優しくて誰よりもかっこいい女だ。



そんな紫乃の性格に何度惚れ直したか分からない。



これだけ優しくて綺麗な心を持つ紫乃は、いつか男に狙われるだろう。



『佐々木さん居ますか?』



……ほら。



朝に紫乃が思いっきりぶつかった男が、わざわざこの教室に来て昼食の誘いをしている。