そう思って混乱していると、哀が私の手首を強くつかみ、そのまま引き上げる。



思いっきり引っ張られたから少し腕が痛い。



少し痛かったから腕を振り回して、私は離して、と嫌がる。



「何してんの哀!痛いから離して」



「早く行くぞ」



私の言葉を聞かず、問答無用で階段から離れさせられる。



寧音くんは私たちをじっと見つめているけど、何も言わず、ひとつも動こうとしない。



チラッと寧音くんを見て、片方の手で手を振る。



ふっと笑って手を振り返してくれたのが嬉しくて、私は1人で口元をほころばせた。