だけど一つだけ、私は分かった。



哀が誰かのものになるのが私は怖かったってことだ。



♡♡



「紫乃」



「……」



昇降口まで一人で向かって靴を履き替えようとしたら、後ろから哀の声がした。



私が無視して歩いていっても、哀はすぐ後ろに立って着いてきた。



そりゃあ同じ家に帰るんだから着いてくるのは必然的だけど、まだ学校なのに一緒になんてみんなに見られてしまう……!



それが怖くなって、私は振り返る。



哀が驚きながらも、ふっと笑った。



「いきなり振り返ってなんだよ」



ふいに笑いかけてきて少しドキッとしてしまった。