「じゃあ、瑛翔くんに色々質問してもいい?」

 そう問われ、断る理由もないので首を縦に振る。すると、千歳は入院着のポケットの中からスマホを取り出した。メモでも、するのだろうか。

「誕生日はいつ?」
「7月10日」
「待って、私と1週間しか変わらないよ」
「7月17日?」
「そう。徳川家茂と同じなの。こんなに誕生日近い人と初めて出会った」
「へえ。俺、小学生の時に生まれた時間も1時間しか変わらなかった人に出会った事ある」
「そんな奇跡あるんだね」

 それからも血液型、趣味、好きな芸能人、尊敬している人等色々聞かれた。聞き返さなくても千歳は自分から答えてくれる。この女子生徒はコミュニケーション能力が高い。

「瑛翔くんなら秘密守ってくれそう」
「えっ?」

 心臓の音がうるさかった。これまで、ずっと明るく喋っていた彼女の瞳の彩に寂しさが浮かんでいるような気がしたから。
 嫌な予感がした。