千歳の温もりが腕の中で、全身で、感じられる幸せ。

「瑛翔くん…」
「千…、じゃなくて美雨…」
「///」

 僕が下の名前で呼んでみると、彼女の頬は今までにないほど赤みがかっている。
 か、可愛い…
 僕がこんな心情になるなんて、思いもしなかった。

 面会時間はもう数分しかない。
 帰りたくない。ずっとこの時間が続けばいい。美雨を、不安にさせたくない。

「行かないで…」
「俺だって帰りたくないよ…」

「美雨、こっち向いて」
「…ン」

 唇と唇が触れる。人生初の、口付けだ。

「きゅ、きゅ、急に、き、き、き、キスなんて…」
「フッ」

 美雨の焦り具合に笑みが零れる。

「これで、明日まで持つ?」
「…うん///」
「また、明日」
「うん///」

 僕自身の顔が紅潮するのを抑えるので精一杯だった。やばい、可愛すぎる。

 僕は幸福感に包まれながら病院を後にした。