「びっくりした?」
「うん」
「サプライズ大成功!!」

 僕の誕生日、覚えてくれていたんだなという嬉しさが1番大きかった。自分でも誕生日のことを忘れていたというのに。
 来週はお返しをしないとな。

「どうしても、誰かの誕生日パーティーをやってみたくて」
「ありがとうな」
「うん!」

 小学生のような無邪気な笑顔はいつでも僕をほのぼのさせてくれる。

 僕はどうしようもなく千歳のことが好きなんだな。
 今更になって自覚する自分が恥ずかしい。ただ、告白はしない。千歳の精神的不安になってもいけない。

「これ、あげる」

 綺麗にラッピングされた袋を丁寧に開けるとそこにはシャーペンが入っていた。

「男の子の好みってわかんないから、無難かなと思って...」
「ありがとう」

 本当は同じものを持っていた。
 しかし、千歳が選んでくれたということが嬉しくて本当のことは絶対に言わないと誓った。

 逆に僕は女子の好みがわからないから香坂に聞いて来週、千歳が喜んでくれそうなものを選ぶことにする。
 結菜とは年が離れすぎて好みが合わないだろう。

「ケーキはないんだけど、それはごめんね」
「いいよ。気持ちだけで嬉しいし」
「瑛翔くんは優しいね」
「そうか?」
「うん。私の家族とは大違い」

 家族の話はあまり聞いたことがない。話したくないように見えたからわざわざ聞くことも無ければ知ることも無い。けれど、家族の話題になると千歳は泣きそうになる。
 千歳は社長令嬢だと言う話を聞いたことがある。
 それが本当なのかは知らないが、もしそうなら...

「あ、暗くなってごめん」
「全然」

 家族の話題は、改めて避けることにした。