僕は授業中、千歳に先生が以前話していた小話の話になった時にはそれの説明をし、どうにかして千歳が普通にクラスに馴染めるように支えていった。
人気者の千歳と何もかも平凡な僕。
端から見れば書類を届けに行っただけでなんでここまで仲が良いのか不思議に思うはずだ。
だからなのか。
「ねえ、美雨ちゃんと日向って付き合っているの?」
「2人って恋人だったりする?」
こんなことをクラスの少ない女子メンバーに尋ねられる。
千歳が否定し事は丸く収まった。
僕らは疑似恋人ではあるが恋人ではない。それをちゃんと弁えている。
「学校で男女が話しているだけでこんなに聞かれるんだね」
「な。別に男女でも雑談くらいするだろ」
「だよね...」
なぜか千歳の顔が曇る。男女の雑談。ここに何も悲しくなるような要素はないはずなのに。
「...千歳?」
「いや。なんでもない」
この顔を見ると無性に千歳を守りたくなる。
母性本能とはまた違う、何というかそういう感情が渦巻いていた。