「瑛翔、くん…」
「千歳…」

 床に散らばる星型の涙。

 杠葉さんに話を聞いたばかりということもあって、どうやって接したらいいのか、胸が詰まる思いがした。

「私、凪音と仲直りできないのかな…」
「俺も協力するから、頑張ろう」
「うん…」

 動揺がバレないように接するのが本当は必死だった。

 怖かったんだ。

 これ以上、余命を削らせたくない。
 涙なんか見たくない。

 速水に、このことは言った方がいいのだろうか。けれど千歳の状態に耐えられなくなったであろう彼女に伝えるのは危険でもあった。
 それでも、いつかきっと速水は後悔が押し寄せ…

「瑛翔くん」

 優しく僕の名前を呼ぶ千歳に近づく。

「ちょっとだけでいいから、横にいて…」
「…?」
「瑛翔くんの手、あったかい」

 華奢な手で、僕の手を掴む千歳。不意なもので僕は顔が火照ってしまう。全然嫌ではない。ただ、こんなのが初めてで…

「ったら…」
「鱈?」
「ううん、なんでもない…」

 暖かなな陽だまりが病室にはあった。