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 僕は最初、何が起こったのか分からなかった。今まで千歳の1番の友達で1番の理解者だった速水が、彼女に対して冷たくあしらっていたことに。
 それでも、僕は段々と速水の心情を察した。

「私、私...」

 速水が去って数分。
 千歳の目から、涙がこぼれていた。

 初めて見た、星の涙。

 星の形をちゃんとしていて、色は透明。ダイヤモンドのように輝いていて、1万円で売れると言う話も納得はいく。しかし、そこにある背景はそんなものでは片づけられるはずがなかった。

「どうしたらいいのか分かんないよ...凪音...」

 嗚咽を繰り返す千歳の背中をさすり、何も声をかけずにただその場にいた僕。

 きっと速水は耐えきれなくなったんだと思う。
 千歳の命が、刻一刻と削られていっていることに。

 僕だって今まで、病気をないものだと見ていたのだから、速水が現実逃避をしていたことに不思議さはない。しかし、今回千歳が熱中症だといえど倒れたことに、どれだけ目をそらそうとしてもそらせない現実があったから。

「もう、凪音とあの時みたいに話したりできないの...」
「...」

 千歳の涙があたりの床を埋め、部屋はきらきら輝いている。

 それに対して僕と千歳は反対だった。


「美雨ちゃん⁉」

 通りかかった看護師が僕らの状況を見て顔面蒼白になっていた。

「美雨ちゃん、泣いたら...」
「え...」