僕は面会時間ギリギリまで千歳の部屋にいることにした。
 せっかくの外出許可も、今回はもう駄目になったらしい。

「み、美雨!」

 扉が豪快に開き、速水が入ってくる。速水には僕から連絡を入れていた。

「無理したら駄目って言ったじゃん...」
「ごめん...」

 2人はしんみりとした感情へと変わり、沈黙が続いていた。僕も、言葉を発することが出来ない。
 今まで目をそらしてきた。
 入院はしているけれど、千歳が病気なのだと実感することはなかった。

 現実を、思い知らされた気がした。

 数分間沈黙が続き、速水が大きく息を吸う。

「美雨、もうやめよ...」
「え...」
「心配ばかりしてられない。ごめん...」
「凪音...」

 速水の背中が、とても小さく、そして冷たく見えた。