その日は雨が降っていた。

 朝スマホの通知を確認すると千歳からもう自分の家に帰ったという趣旨の連絡が来ていた。今日、父親と結菜は最近流行りのアニメ展に行くと言って家にはもう僕しかいない。

 結菜にこの前みたいに茶化されるのは正直きつい部分があったため助かった。

 僕の最寄り駅に11時に待ち合わせしている。時間はまだある。家事を先に終わらせてしまおうと思い立ち、スマホをキッチンの端に置き通知が来たらいつでも反応できるようにはした。

✉ ͗ ͗ よっ。今日は千歳さんとデートなんだろ?

 通知が来たから反応しようと思ったら相手は青木。これに返信は面倒なので未読スルーをしておく。青木は返信をしなくても特に何か言ってくることが無いのは知っている。

✉ ͗ ͗ 稔から聞いたよ!千歳さんとデートだって

 今度は香坂からのLINE。
 2人に疑似恋人のことを言っておらず勘違いされるのは厄介とは思いながら、どうしたらいいのかわからなくなっている自分はいる。
 2人のことは全く気にせずに残りの家事を終わらせ、自転車に乗って自分の最寄り駅まで向かった。