「お兄ちゃん、何か良い事あったの?」
「え?」
「だって、最近お兄ちゃんめちゃくちゃ楽しそうなんだもん」

 バレる、もんなんだな。

 千歳や速水と関わるのは新しい刺激が得られ、有意義な時間を過ごし、自分の中で楽しさを見出せていると感じている。

 僕がただただわかりやすいだけなのか今どきの小学生が鋭いだけなのかはわからないが、そこにいたわけでもない結菜が感じ取れているという状況に驚きを隠せない。もう、赤ちゃんだった頃の結菜ではなくなっている。

 千歳は僕にとって何の関係もない人のはずだった。

 青木と香坂が付き合いだしていたことに変わりはなかっただろうから人間関係が今までと全て一緒とはなっていなかっただろうけれど、あの僕の一言でこんなにも人間関係がかわってしまうものなのだと驚いてしまう。

 余命宣告されている人と関わりを持つことになるとも、思っていなかったし。

「結菜、お兄ちゃんに早く恋人出来てほしいもん」

 無邪気に笑うだけの妹の発言が、僕の顔を赤らめる。
 結菜の爆弾発言。小学4年生でもうそんな話をしているとは。女子がそういう話が好きなのは100も承知だが、年の離れた妹でしかなかった結菜が怖く見える。普通に怖い。

 恋人、か…。

 今は疑似恋人として千歳がこれからやりたいらしいことに付き合っているだけ。けれど、僕も青木や香坂のように普通に恋をする日が来るのだろうか。

 そんな自分が、未だ想像は出来ない。

 千歳が望んでいる恋の形を今は叶えることで十分。そう思った。