今日は特に予定がなかった。
 けれど、今日は千歳が外出許可をもらうための検査を受けているらしく面会は出来ない。
 千歳が好き、とかそういう感情はない。

 ただ、彼女と話している時間は全く苦ではなかった。

 そんなことを考えながら駅のホームを歩いていると速水が近くにいることに気づいた。
 それは向こうも気づいたらしく、速水は僕の方に向かって歩いてくる。

「日向、帰りこっちなんだ」
「うん。宮桜で降りる」
「私その1個後だ」
「意外と、中学の校区隣だったりするかもな」
「だね」

 千歳の話はしなかった。あの時話しかけられただけなのに、僕らは前から出会っていたかのように話す。
 きっと、速水はコミュニケーション能力が高い。千歳と仲がいいことも懐に入った。

「美雨のこと、ありがとう」
「え?」
「この前、美雨のところ行ったらすごく生き生きしてた。そんな美雨、久しぶりに見た。きっと、日向のおかげ」

 …

 僕が千歳のために何か出来ている…?

「きっと、美雨の病気のこと、聞いたんだよね?」
「ああ」

 速水は今どんな感情があるんだろうか。幼馴染が余命宣告をされていて。

「びっくりしたでしょ?あの美雨がって」
「うん」
「昔から美雨、色々諦めてきたの」

 それから速水は自分達の幼少期の話をした。