「今日も千歳さんのところ行くの?」
「今日は行かない」

 この前のことがあってから、青木&香坂ペアは毎日のようにそう聞いてくるようになった。

「2人、いい感じなの?」
「は?」
「あの距離感、どう考えてもそうとしか言えないよ」

 香坂、鋭い。
 本当の恋人ではない。でも、"恋人"は一概に間違えとも言えない。

「オンナの勘は鋭いからね」

 イタズラをするような笑みが正直怖い。

「全然そんなのじゃないから。じゃあな」

 同じクラスじゃなくて良かったかもしれない。恋人のフリということは僕ら2人の秘密であって、千歳のためにも隠し通そうと決めたから。
 …千歳は基、速水はどう思っているんだろうか。
 それを確かめる手段はなかった。