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「ねえ、死んだら星になるって話、聞いた事ある?」

 僕だけになれば、千歳はこういうシリアスな話を持ってくる。
 こんな話を出来る人が限られているのは理解できるが、その雰囲気を纏いながらこんな話をされると身構えてしまう。

「ちっちゃい子とかに死を説明する時のやつだろ?」
「それもあるけど、真面目な話で」
「真面目な話?」

 死んでしまえばどうなるのか、そんなことは死んでみなければわからない。ただ、『死=星になる』という話でないのなら千歳の聞き方的には僕の返答は「知らない」にあたるのだろう。

「死んだら、夜空に見える星に紛れて光りながら大切な人を見守るんだって」
「へえ」

 迷信かおとぎ話だろうけれど、事実を知らなければどんな風に考えても間違えとは言えない。

「私はあと少しで死んじゃうけど、それが本当だとしたら素敵だと思わない?」
「どうして?」
「だって、肉体が死んでしまっても魂は残ってるんだよ。それで、みんなを空から見守れる」

 千歳は何が伝えたいのか。僕にはあまり理解が出来ない。空から見守っても何もできない。
 それだったら早く生まれ変わって大切な人を物理的に守れる立場でいた方がその大切な人の幸せを直に感じる事が出来るのではないだろうか。

「こんな都会だったら星なんて見えないけど、星からはみんなが見えるよね」
「うん」
「みんなが気づかないところで、みんなを応援して、それが叶ってくれれば、それよりも嬉しいことなんてないもん」

「死ぬの、怖くないのか?」

 千歳の考えを聞いて、思い浮かんだのはそんなどうでもよくてくだらない質問だった。

「怖くないよ。昔から、長生き出来ないかもしれないって言われていたし」
「・・・」

 聞いたのも含めて僕は馬鹿だ。言いたくないかもしれないのに。

 千歳が星になりたいというその考えをすべてを理解したわけではない。
 けれど、千歳の人柄が改めて垣間見え、疑似恋人を続けるうえで大事にしたいと思えることを見つけたような気がした。