教室に着いても、僕にはまだクラス内での友達がいないから1人で本を読んでいる。友達を作る気はあるが、自分から積極的に話しかけるタイプでもない。

「おはよう、日向」
「うん」

 千歳と反対側の隣に座る男子生徒に挨拶されて素っ気なく返事をする。
 このクラスの雰囲気は悪くはない。

 予鈴が鳴れば、ぞくぞくと人が入ってきて、人間の熱気に包まれる。
 まだ4月。これが夏になればどうなることやら。この学校の校舎が古いからなのか、エアコン自体はあるけれどほとんど効かない。

「今日の数学で抜き打ち復習テストが行われるらしいから、頑張れよ」

 担任がショートホームルームの最後にそう言ったことでクラスはざわつく。
 当たり前だが、テストが好きな人間など少数派だろう。たしかに定期考査の場合は早く帰れたりする。しかし、テストはだるい。