✉ ͗ ͗ 今日、友達連れてっていい?

 千歳へ送ったLINEはすぐに既読がついた。
 病院にいるだけじゃ、検査がない限り暇だということを言っていた気がする。ネットサーフィンでもしているのだろう。


✉ ͗ ͗ 誰?
            昨日話してた青木と香坂
   大歓迎!
              なら、放課後行くわ
                 多分5時とか
   了解!


 その画面を2人に見せる。
 昨日どんな話をしたのかとか、色々めんどくさい事は聞かれたが、フル無視することに決めた。

「千歳さんのアイコン、可愛い」
「それな!」
「私のアイコンは?」
「もちろん可愛いに決まってるじゃん♡」

 2人の鬱陶しい惚気を振り払い、学校に着いてすぐ僕らは別れる。担任に昨日の千歳の様子を話すため、僕は職員室へ向かった。

「失礼します」

 そこまで大きな声では言わなかったが担任はすぐ僕に気がついてくれた。

「おお、日向。昨日はありがとうな」
「千歳元気そうでしたよ」
「そうか」

 余命を聞いたとは言わなかった。けれど、そのことを聞いたからなのか、担任が悲しそうな顔を一瞬見せたことは見逃せなくなっていた。

「また、何かあれば頼んでください」
「御家族が入院してるんだってな」
「はい。なので負担にはなりませんし」
「ありがとう」

 そう言って職員室を出た時、僕は速水と目が合う。

「あんたが日向だよね?」
「うん」

 前も思ったが、彼女の目つきは鋭く、いつ怒られてもおかしくないようなそんな感じがする。

「私は速水凪音。美雨から聞いてる?」
「昨日聞いた」
「そう。昨日は美雨のためにありがとうね」
「いえいえ」

 僕はそう返したが、それが本題では無い気がした。

「ねぇ、日向。あんた、美雨に下心ないよね?」
「は?」

 やはり、そういうことか。
 千歳は人気者だ。速水がそういう心配をしても仕方がない。今まで僕は彼女と関わりがなかった。

「祖母のついでって言ったら失礼かもしれないけど」
「それは聞いた」
「ほんとに大丈夫だから」
「うん。なら良かった。ごめんね引き止めて」
「いいよ」

 速水の背中がどんどん遠ざかり、僕は変な心地がした。関わったことも無かった香坂以外の女子。ただ書類を届けに行っただけなのにこんなにも話す相手が多くなるものなのか。