「はよっす、美音」


「あ、椿(つばき)!」


 私が玄関を出ると、同じように隣の家から一人の男の子が出てきた。


 彼は幼なじみの三浦 椿(みうら つばき)


 隣の家に住んでいて、小さい頃からずっと仲良しの男の子。


 明るくていつも元気で、陸上部のエースなんだ。


 椿の横に並びながら、私たちは桜並木を歩く。


「今日クラス替えあるよね!今年も椿と同じクラスになれるかな?」


「なれるだろ!小学一年生からずっと同じクラスなんだし!」


「そうだよね!椿がクラスにいない学校なんて、なんか想像つかないもん」


「俺も!」


 私たちは桜をながめながら歩く。はなびらがふわりと私の手に乗った。


「あ、ねえねえ椿」


「ん?」


「私が小学一年生の時、しろくまのキーホルダーをなくしたこと憶えてる?」


 椿は思い出すようにあごに手をあてた。


「あー、あのおばあちゃんが作ってくれたって言ってたやつか?」


「そう!」


「美音、あの時なくしたならなんで俺に声かけてくれなかったんだよ。見つかった時に、ずっと探してたって聞いてびっくりしたわ」


「ごめんごめん。椿はもうクラスでも人気者で、みんなから遊びに誘われてたから。なかなか声かけづらかったんだよ」


 当時の私は引っ込み思案だったから、椿や友達の輪に入ることがうまくできなかった。