佐藤はあれから、恥ずかしそうにうつむいたまま歩いている。


 急にキスしてしまったこと、怒っているんだろうか…?


 だってしかたないだろ。


 佐藤があまりにかわいかったから。


 俺はあのときからずっと、佐藤のことが好きだった。


 そう、小学一年生だった、あの日から。




 あの日、本当は遠回りをして帰っていたんだ。


 家にすぐに帰りたくなくて。


 小学校に入学したばかりだというのに、すぐに転校が決まった。


 理由は仕事上転勤の多い父親のせい。


 せっかく少し仲の良い友達も学校にできて、なんとか楽しそうにやっていけそうだと思ったときだった。


 それなのに転校だなんて。


 幼稚園のときもそうだった。


 仲良しの友達ができて、少し幼稚園に慣れてきた、というところで引っ越し。


 決まっていつもそうで、今回は早々引っ越さないって言ってたのに…。


 引っ越しの話を父にされたばかりで、俺は不貞腐(ふてくさ)れてた。


 そんなときだった。


 佐藤と出会ったのは。


 なにかを必死に探しているみたいで、自分の服が汚れるのもかまわずに草むらを探し続けていた。


 なにを探しているのか知らないけど、俺には関係ない。


 そう思って最初はそのまま通りすぎた。