「ここが、藤宮くんのお(うち)…なんだよね…?」


 私は桜ちゃんから手渡されたメモに書かれた住所と、マンションの入り口に書いてある住所とを見比べる。


 目の前にはものすごい高さのマンションが立っていて、見上げるだけで首が痛くなってしまいそう。


 メモにはこのマンションの606号室だと書かれていた。


 私は管理人さんにお願いして、マンションに入れてもらった。


 雪乃ちゃんが立てた計画は、最近お休みが続いている藤宮くんに授業のプリントを届ける、というもの。


 桜ちゃんが「藤宮くんにプリントを届けてあげたいんです!」というと、先生は簡単に住所を教えてくれたみたい。


 私は二人の協力のもと、プリントを持ってここにやってきた。


 エレベーターで6階まで上がって、私は『606号室 藤宮』と書かれたお家のチャイムを鳴らした。


 すると、すぐにドアが開いて、藤宮くんが出てきた。


「藤宮くん!」


 顔を見るのがなんだかすごく久しぶりな気がした。


 藤宮くんは目を丸くして驚いた。


「佐藤だったのか。管理人からうちに用がある女の子がいるって、さっき連絡があったけど」


 なにから話そう…!久しぶりに会えたのがうれしくて、なにから話していいのか分からなくなっちゃう。


 そうだ、ひとまずこれを渡さないと!


「あの!これ!」


 私は手に持っていたプリントの山を、藤宮くんに渡す。


「藤宮くんがお休みしてた間の授業のプリント」


「わざわざ持ってきてくれたのか。ありがとな」


「それと!あの!少し私と話す時間をもらえないでしょうかっ!?」


 思い切ってそう藤宮くんに言うと、藤宮くんは「わかった」と言って、プリントを玄関に置いて出てきてくれた。


「少し歩くか」


「うん…!」


 私たちはマンションを出て、近くの河原を歩くことにした。