体育祭の午後の部がはじまった。


 午後の競技はリレーや団体種目が多め。


 まずは学年別クラス対抗リレーだ。


「おっしゃ!行ってくる!」


 気合十分で立ち上がる椿。


「椿、がんばって!」


「おう!美音のために一位取ってくるから、応援してて!」


「う、うん!」


 私のため…?クラスのため、白組のためじゃなくて?


 私が首をかしげながら椿を見送っていると、前に座っていた桜ちゃんがくるっと振り返った。


「おやおやみおちん。最近三浦くんといい雰囲気ではないですか?」


「いい雰囲気…かな?」


私たちは幼なじみ。それ以上の関係になることなんてあるのかな…?


「美音ちんはそうでも、三浦くんはどうかなぁー?」


 桜ちゃんが私の心を読んだかのように意味深ににやりと笑う。


 そこに私の隣に座る藤宮くんがぴしゃりと言い放った。


「ただの幼なじみの過保護だろ。恋愛感情じゃない」


 私も、多分そうだと思う…。


 最近の椿には少しドキッとさせられることもあったけど、私たちはずっと幼なじみで、家族みたいに育ってきた。


 椿が私のことを女の子として好きだなんて、そんなことないと思うんだけど…。


 藤宮くんの言葉に、桜ちゃんは目を丸くしていた。


「藤宮くんが私たちの会話に入ってくるなんて、超めずらしい!」


 さらにその横では、雪乃ちゃんが意味ありげな笑いを浮かべている。


「美音は菅原先輩とも仲良しだよね?」


「ええ?そうかなぁ、たしかに部長とマネージャーだから、よく話してはいるけど…」


 仲がいい、と言うには恐れ多いような…?


「美音、モテモテじゃん」


「もうっ!雪乃ちゃんまで!からかわないでよ~」


 うるさかったのかな、私たちの会話を藤宮くんはなんだか不機嫌そうに聞いていた。