「さてと、これを運んだら終わりっと」


 私は教卓の上に積まれたノートの山を確認した。


 今日、私は日直だった。


 もう一人の日直のペアの子が風邪でお休みだったので、私一人の日直。


 日直と言っても、黒板を掃除したり、その日の日誌を書いたり、号令係を担当するくらいで、一人でも十分やりとげられた。


 でも最後に、このノートの山を先生のところに持って行かなくてはいけない。


 6限終わりに集めた社会のノートで、日直が運ぶことになっていた。


 でもこれが終われば日直の仕事は終わりだ。


「よし!もうひとふんばり!」


 私はノートの山を抱えて教室を出た。



 廊下に出ると、吹奏楽部の合奏が聞こえた。


 いつもは部活に行くため、すぐに校庭に出てしまうので、吹奏楽部の練習を聞くのは新鮮だった。


 あ、この曲知ってる!たしかドラマの主題歌だった…。


 吹奏楽部の合奏に耳をかたむけて歩いていると、なにかが足に引っかかって、私は前のめりになってしまった。


「わっ!」


 絶妙なバランスで積まれていたノートたちが、私の腕からバタバタと音を立てて落ちていく。


 どうやら廊下に置きっぱなしにされていたほうきに、足をとられちゃったみたい。


「やっちゃった!早く拾わなきゃ!」


 私はあわてて屈んで、ノートを山に戻していく。


 そこにだれかがやってきて、同じように屈んでノートを拾い集めてくれた。


「あ、ありがとうございます…!」


 私が顔を上げてお礼を言うと、そこには呆れたような顔をした藤宮くんがいた。