「美音、悪い…」


 体育の授業終わり、椿がしょんぼりとした様子で私に声をかけてきた。


「せっかく美音が応援してくれたのに…」


「え、やっぱり聞こえてた?」


「そりゃ聞こえるだろ。俺が美音の声を聞き逃すはずないし!」


「声、大きかったかな?」


「いや!応援すげーうれしかった!だから美音のために勝ちたかったのに。藤宮にいいとこ全部持ってかれたー」


 悔しそうに肩を落とす椿。


「椿だってかっこよかったよ!ナイスファイト!」


「マジ!?」


 私の言葉に、目をかがやかせる椿。椿の後ろにしっぽが見える気がする。なんだか大きな犬みたい。


 椿はいつもの元気で明るい笑顔に戻って、にっと笑った。