「椿?陸上部はもう終わったの?」


「今終わった!そんなことより!」


 椿は私に手短に答えると、菅原先輩をびしっと指差す。


「いっつも見てるけど、先輩、美音との距離近すぎないっすか!?」


「え、そうかな?佐藤さん、嫌だった?ごめんね」


「あ、いえ!そんなことないです」


「よかった」


「いやよくないだろ!」


「ええっと、三浦くんだっけ…?佐藤さんの幼なじみの」


「そうっすけど…」


「いつも見てるって言ってたよね。もしかして…僕のファンだったりする?」


「いやそんなわけないっしょ!?」


 なぜかあわてた様子の椿と、のほほんとおしゃべりする菅原先輩。


 部活の垣根を越えていろんな人と話せる椿にすごいなーと感心していると、昇降口から出てくる一人の男子生徒が目に入った。


 あ、藤宮くんだ。


 今日転入してきたばかりの藤宮くん。


 あまりお話はできなかったけれど、そういえばさっき、少し気になることを言っていた気がする。


 変わらないな、って聞こえた気がしたんだ。


 それってなんのことだったんだろう?


 聞けそうなタイミングがあればいいんだけど…。


 藤宮くんの後ろ姿を見送りながら、私は首をかしげた。