「あれ?この缶、なんだっけ…?」


 部屋を片付けていると、くまの絵柄のクッキーの缶を見つけた。


 明日から中学二年生になる私、佐藤 美音(さとう みお)は現在部屋のお片付け中。


 明日にはまた教科書やノートが山ほど増える。


 だから今日中に一年生の教科書を片付けておかないと、勉強するスペースがなくなっちゃう。


 二年生になったら、また勉強が難しくなっちゃうのかな、なんて少し不安に思いながらも、私は教科書やノートを勉強机から本棚に移していた。


 ついでに散らばっていた小物なんかも片付けてしまおうと、クローゼットを開けて、そこで隅に置かれているクッキーの缶に気がついたんだ。


 クッキーの缶を開けると、中にはたくさんの小さなお手紙が入っていた。


「あ、これ!」


 小学生の時にクラスのお友達と交換してたお手紙だ!なつかしいなぁ~。


 小さくたたまれたお手紙を広げると、カラフルなペンで書かれた文章が目に入る。


 当時はいろんな子とお手紙の交換をしていて、それがすごく楽しくて、大事にしまっていたんだ。


「なつかしいなぁ」


 私はそのひとつひとつを手に取り、ながめていく。


 中学生になって連絡を取っていない子もいて、元気かななんて思いをはせた。


「ん?」


 小さなお手紙の山の中になにか固いものがあって、それがかつんと指先に触れた。


 なんだろう…?


 私はそれを缶から取り出した。


「しろくまのキーホルダー…?」


 それは少し汚れた、しろくまのマスコットキーホルダーだった。


 触れた途端、思い出がぶわっとよみがえる。


「そうだ、これって…」


 そのしろくまのキーホルダーは私にとって、大切なものだった。