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「窓をバックにしよっかな?」
「うん、いいね」

 向かい合ってはみるものの、何かが足りない。私は部屋に飾る用に購入した色とりどりの薔薇の造花を鞄から出し、手に取った。髪を団子にして、頭にそれをつけてみる。

「あぁ、やっぱりウェディングドレス、着てみたかったな」
「もしもこの先、伊織に好きな人が出来たら、きちんと結婚式を挙げればいい」
「他に好きな人とか……絶対ないよ、柊くん以外には考えられない」

 柊くんは「使っていい?」と言いながら、今日私が買った、シルクの白いシーツを袋から出した。

「伊織、ドレス作ってあげる。簡単なやつだけど……そのセーター脱いでキャミになって?」
「う、うん。分かった」

 素直にしたがい、私は白いキャミソール姿になる。

 この場で作るとか、どうやって作るんだろう。
 様子を伺っていると、シーツを私に巻きだした。あ、これ、見たことある。一枚布の、トーガ?だったっけな? 柊くんは安全ピンも使いながら器用に形を作り、最終的に白いドレスまではいかなくても、ワンピースみたいになった。私の頭の上にあるピンクの薔薇の造花をひとつ取り、胸元に付けて華やかさを出す。

 鏡で全身を確認すると、柊くんも横に並ぶ。柊くんは元々白系の服装だったから、お似合いな雰囲気。段々と自分が本当の花嫁のように思えてきた。私達は窓の方へ移動して向かい合った。

 見つめあってると涙が出そうになってきたから目をそらす。心が震えてきて、言葉が何も出てこない。