困り果てていると、誰かに声をかけられた。


「君、どうしたの?」

「え…?」


そこには、男性がいた。

黒髪短髪、黒いスーツを着た男性。


仕事帰りの人かな?


「あ、えっと…道に迷ってしまって」

「ふーん。どこに行きたいの?」

「○○駅までなんですけど」

「あー、真逆だね」


え"え"え"え"え"え"え"え"え"?

真逆ですと????


「ふっ。方向音痴か」

男性は鼻で笑っていた。


さっきの紳士そうで優しい表情でなく、いじわるな顔をしている。

この人、豹変してるけど…まぁ、どうでもいいや。


「案内してやる」

「あ、わざわざ大丈夫です!」

「いいからついてこい」


偉そうに、そして私の腕を掴み反対方向へと歩き出す。


いじわるそうだけど、優しい人なんだな。

なんて呑気に考えていた。