「さっき作ったお菓子、茂木さんに渡したんだ」



「っ・・・!?ま、茉弘!?ビックリした・・・急に話しかけてこないでよ」



茂木さんの背中を見送りながら考え事をしていた時、後ろから茉弘に声をかけられた。



マジでビックリした・・・心臓飛び出るかと思ったもん。



「あぁ、ごめんごめん。そんなに驚くとは思ってなくて」



「・・・それで、アンタは誰に渡したのよ」



いたたまれない空気になってしまって、思わず茉弘に話題を振る。



とは言っても、どうせ自分で食べようとして二海くんに盗られたんだろうけど。



「・・・いや、自分で食べようと思ったんだけど・・・アイツに盗られた」



「でしょうね」



二海くんの事だ、茉弘が作ったものを食べたくて奪い取ったんだろう。



本当、こんなガサツな女のどこがいいのやら・・・。



どうせ“マズい”とか言いながら幸せそうに食べたんでしょ。




「アンタ・・・いい加減、答え出しなさいよ」



二海くんが話題に出たところを見計らって、前々から言いたかったことを茉弘に伝える。



アンタ達が気まずくなってから──つまり、二海くんが告白してからかなり時間が経ってる。



それなのに、このバカはいまだに返事を返していなかった。



「わ、わかってる。わかってるけど・・・どのタイミングで伝えていいのかわかんないんだもん」



モジモジとしながら顔を赤くする茉弘。



いつもの茉弘からは考えられないような表情に少し目を見張る。



「へぇ〜・・・自覚はしたの。それにしてもおっそいわね〜、もっと早く気付きなさいよ。だからバカって言われんのよ」



「う・・・」



あんなに分かりやすく照れて動揺してんのに、今更気付くとか・・・本当バカ。



こんな鈍感なやつを相手にしている二海くんが可哀想になってくる。



まぁ、私も攻略対象にあんなにムキになってたってところはバカなんだけど。



「自覚したんならさっさと伝えてあげなさい。アレ、あぁ見えて結構我慢してると思うわよ」



「う、うん・・・頑張ってみる・・・」



あれだけ茉弘の邪魔をしたいと思ってたはずなのに、それが嘘かのように彼女の背中を押す。



多分、気まぐれでやってる事だ。



別に茉弘に言った暴言を気にしてやってるとかでは無い。



決して。



「大丈夫よ、振られる、なんてことはないんだから」



そう、私と違って、アンタらは両片思いだ。



勇気を出して想いを伝えれば、報われる運命にある。



まだ意識して貰えてない私とは、全然違う。



それが、ちょっとだけ羨ましく思ってしまった。